生成AIの「ハレーション」を誤回答の意味で調べているなら、一般的に使われる用語は「ハルシネーション(Hallucination)」です。
ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容や根拠を確認できない情報を、もっともらしく生成してしまう現象です。この記事では、言葉の違いから原因、実例、仕事での対策まで分かりやすく整理します。
生成AIの「ハレーション」とは?ハルシネーションとの違い
生成AIが事実ではない情報をもっともらしく作る現象について知りたい場合、覚えておきたい言葉は「ハルシネーション(Hallucination)」です。
「ハレーション」と「ハルシネーション」は響きが似ていますが、本来は別の言葉です。
| 用語 | 主な意味 | 生成AIとの関係 |
|---|---|---|
| ハレーション | 写真・映像で強い光がにじむ現象。ビジネスでは周囲への悪影響・波紋という意味でも使われる | AIの誤情報生成を指す一般的な専門用語ではない |
| ハルシネーション | 英語のHallucination。生成AIが事実に基づかない情報などを生成する現象 | 生成AIで問題になる代表的な現象 |
| Hallucination | ハルシネーションの英語表記 | AI研究や技術資料でも使われる |
つまり、「生成AI ハレーション」で検索してこの記事へ来た方が知りたい現象は、多くの場合「生成AIのハルシネーション」だと考えられます。
ソフトバンクが2026年3月6日に掲載した解説記事では、ハルシネーションについて、AIが事実に基づかない情報を精緻に出力することだと説明しています。同記事はソフトバンク株式会社 IT統括 AIテクノロジー本部 AI&データ事業推進統括部 Axross事業部 サービス開発課の中村亮太氏が監修しています。
ここで重要なのは、ハルシネーションが単なる誤字や入力ミスとは違うことです。
間違っているのに、文章としてはとても自然に見える。これがハルシネーションの厄介なところですよね。
たとえば生成AIに論文を尋ねたところ、実在しない論文タイトルや著者名を組み合わせて紹介することがあります。
架空の統計、存在しない制度、誤った日付、実際にはない会社のサービスなどが、整った文章の中に混ざることもあります。
私はITツールを使うとき、ここを「文章力と事実確認能力は別物」と考えるようにしています。
文章がきれいだから正しいのではありません。根拠まで確認できて初めて、事実として使える情報になるということですね。
なぜ生成AIはハルシネーションを起こすの?
生成AIでハルシネーションが起きる大きな理由は、LLMが「真実だけを取り出すデータベース」として動いているわけではないからです。
一般的な大規模言語モデル(LLM)は、基本的には文脈に応じた次のトークンの確率分布を基に、出力を順番に生成していく仕組みを持っています。
「トークン」という言葉は難しく感じますが、ここでは文章を作るための細かな言葉の部品くらいに考えておけば大丈夫です。
つまりAIは、人間の担当者のように「この数字は公式資料に書いてあるか」「この人物は本当に存在するか」と、一つひとつ裏取りしながら文章を書いているとは限りません。
自然な文章と正しい事実は別物
たとえば、
「東京都には有名な○○という観光施設があります」
という文章があったとします。
施設名や地名の組み合わせが文章として自然なら、生成AIは非常に読みやすい説明を作れることがあります。
しかし、施設が本当に東京都にあるかどうかは別問題です。
これが生成AIを「とても詳しい電子辞書」だと思い込むと危ない理由です。
AIが得意なのは自然な出力を作ることであって、すべての文章について自動的に真偽を保証することではありません。
情報が不足していても答えを作る場合がある
特に注意したいのが、AIにとって確認材料が少ない質問です。
たとえば、
などです。
こうした質問に対して、AIが必ず「分かりません」と答えてくれるとは限りません。
質問文や既存の知識から、もっともらしい内容を補ってしまう場合があります。
私たち人間にも、記憶が曖昧なときに「たしか、こうだったはず」と補ってしまうことがありますよね。
生成AIの場合は、それを大量かつ高速に出力できるため、誤りに気付かず転記すると影響も大きくなります。
学習データや参照情報にも左右される
生成AIが利用する情報の中に古い内容や誤った内容が含まれていれば、それが回答に影響する可能性もあります。
また、個々の情報自体は正しくても、人物、地名、年代などの関係を誤って組み合わせれば、結果として事実とは違う回答になることがあります。
したがってハルシネーションを「AIが知らないから適当に答えるだけ」と理解するのも十分ではありません。
モデル、学習・参照データ、質問の与え方、回答時の文脈など、複数の要素が関係する問題として捉える方が実態に近いでしょう。
ハルシネーションにはどんな種類がある?
ハルシネーションの分類方法は研究によって異なりますが、自然言語生成の研究ではIntrinsic HallucinationとExtrinsic Hallucinationに分けて整理する方法があります。
Ziwei Ji氏らによる「Survey of Hallucination in Natural Language Generation」では、Intrinsic Hallucinationを入力・参照元の内容と矛盾する生成、Extrinsic Hallucinationを参照元から裏付けられない内容を追加する生成として整理しています。
Intrinsic Hallucinationは「元情報と食い違う」
Intrinsic Hallucinationは、与えられた情報の内容と生成結果が矛盾するタイプです。
たとえば資料に、
「A社は2025年にサービスを開始した」
と書かれているのに、AIが、
「A社は2023年にサービスを開始しました」
と要約した場合を考えてみましょう。
元資料には正しい情報があるのに、数字や関係を取り違えています。
これなら元資料と見比べれば比較的発見しやすいですよね。
Extrinsic Hallucinationは「資料にない内容を加える」
Extrinsic Hallucinationは、入力された資料から確認できない内容を生成結果に付け加えるタイプです。
たとえば資料には、
「A社は2025年に新サービスを開始した」
としか書かれていないのに、
「利用者から高い評価を受け、業界最大級のサービスへ成長した」
といった説明をAIが付け加えたケースです。
その内容が事実かどうかは、元資料だけでは判断できません。
なお、研究分野ではハルシネーションの定義や分類は一つに完全統一されているわけではありません。
そのため、「ハルシネーションには必ずこの2種類しかない」と覚えるのではなく、誤りを整理する代表的な分類の一つとして理解するのがおすすめです。近年の研究でも、ハルシネーションの分類枠組みには複数の考え方があることが示されています。

生成AIのハルシネーションで実際に何が起きた?
ハルシネーションは、研究上だけの問題ではありません。
生成AIが広く知られるようになった初期から、自然で専門的に見える回答と、事実の正確性とのギャップが注目されてきました。
Metaの科学向けAI「Galactica」
Metaの研究者らは2022年11月、科学分野向けの大規模言語モデル「Galactica」を発表しました。
Galacticaの論文では、科学論文、教科書、講義ノートなどを含む大規模な科学コーパスを学習に利用し、4,800万件を超える論文などが含まれていたと説明されています。
目的は、膨大な科学知識を整理し、論文、数式、科学的な質問などを扱いやすくすることでした。
ところが公開されたデモでは、誤った内容や根拠のない科学的説明をもっともらしく生成できることが利用者から問題視されました。Ars Technicaなど当時の報道でも、不正確な科学文章を生成する問題が報じられています。
公開デモは2022年11月15日に披露され、11月17日には停止されたと後の研究でも記録されています。つまり「2日後」という表現は、11月15日から17日までの日付差を指すものです。
ここは以前の記事より少し丁寧に区別しておきたいところです。
Galacticaという研究モデルそのものが消滅したわけではなく、一般向けの公開デモが停止されたというのが正確です。論文やモデルに関する研究成果は残されています。
この事例から分かるのは、「科学に詳しそうな文章を書けること」と「科学的に正しいこと」は同じではないという点です。
専門用語が多く文章が整っているほど、かえって人間側が誤りを見抜きにくくなることがあります。
Google「Bard」のJWST回答
もう一つ有名なのが、Googleが2023年2月6日に発表した当時の会話型AI「Bard」です。
Googleは公式発表の中で、Bardの利用例として、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の新発見を9歳の子どもにも分かるよう説明する例を紹介しました。
ところが、そのデモ回答の一部に、JWSTが太陽系外惑星を初めて撮影したという趣旨の誤った内容が含まれていることが指摘されました。
ヨーロッパ南天天文台(ESO)は、太陽系外惑星2M1207bがVery Large Telescope(VLT)によって2004年に撮影され、その後太陽系外惑星であることが確認されたと説明しています。
つまり、Bardのデモで示された「初めて」という事実関係が正確ではなかったわけです。
これは生成AIの回答を見る際に、私が特に注意している言葉をよく表しています。
「世界初」「国内最大」「唯一」「最も多い」などの最上級表現は、必ず一次情報へ戻る。
文章そのものではなく、比較対象や基準、年月日まで確認しないと判断できない情報だからです。
生成AIのハルシネーションは仕事で何が危険?
仕事でハルシネーションが問題になるのは、間違った文章そのものより、その文章を事実として次の業務へ流してしまうことです。
資料作成、ブログ記事、顧客対応、契約確認などでは、一つの誤情報が別の判断につながります。
数字や制度をそのまま使う
たとえば生成AIに、
「2025年の○○市場の市場規模を教えて」
と尋ね、具体的な数字が返ってきたとします。
「1兆2,347億円」のように細かな数字が出てくると、なんとなく調査済みの正確な数字に見えますよね。
しかし、出典を確認できなければ事実とは限りません。
ブログ記事や企画書に掲載するなら、市場調査会社の原資料、官公庁資料、企業の決算資料などへ戻る必要があります。
社内規定や契約条件を作ってしまう
さらに危険なのが、会社独自の情報です。
一般公開されていない就業規則や返金条件をAIが知らない状態で、
「当社の場合、この契約は解約できますか?」
と聞いても、正しい社内ルールを答えられるとは限りません。
一般的な制度や似た事例から、それらしい回答を作る場合があります。
その文章を顧客へそのまま送れば、AIの小さな誤りが会社としての案内になってしまいます。
私が実務で分けている3段階
私は生成AIを使う仕事では、内容を大まかに次の3段階に分けて考えています。
言い換え、文章整理、タイトル案、アイデア出し、既に渡した文章の要約
数字、日付、人名、会社名、統計、引用、商品仕様
法律、税金、契約条件、金銭判断、対外的な正式回答、重要な意思決定
この分け方の利点は、「生成AIは危険だから使わない」「便利だから全部任せる」という両極端にならないことです。
間違ったときの影響が大きいほど、確認レベルを上げる。
この考え方なら、パソコンやAIが得意でない方でも運用しやすいですよ。
生成AIのハルシネーションを減らすには?
ハルシネーション対策では、モデルの性能だけに頼らず、質問・参照情報・人間による確認を組み合わせることが大切です。
ソフトバンクの2026年3月6日の解説でも、RAGや外部システム連携、人間による確認などを含め、技術と運用の両面からリスクを抑える考え方が紹介されています。
「資料にないことは推測しない」と指示する
個人でもすぐ始められるのが、プロンプトの工夫です。
たとえば、
といった条件を加えます。
もちろん、こう指示すれば誤りが完全になくなるわけではありません。
それでも私は、「詳しく答えて」だけで終わらせるより、答えてはいけない条件まで伝える方が実務では重要だと考えています。
出典名ではなく中身まで確認する
生成AIが「○○省の資料によると」「○○大学の研究によると」と答えたとしても、それだけでは確認完了ではありません。
資料自体が実在するか、その資料に本当に同じ内容が書かれているかまで確認します。
AIは出典らしい名称まで生成する可能性があるためです。
税制なら国税庁、行政制度なら担当省庁、製品ならメーカー、決算なら企業のIR資料というように、できるだけ一次情報に近づくのが基本です。

RAGで信頼できる資料を検索してから答えさせる
企業でよく使われる考え方の一つがRAGです。
RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では検索拡張生成などと呼ばれます。
簡単にいうと、AIの内部知識だけで回答させるのではなく、必要な資料を検索し、その内容を回答材料として渡してから生成させる仕組みです。
たとえば最新の社内規定を参照できるようにしておけば、AIが一般論だけを頼りに回答するより、根拠を限定しやすくなります。
試験でたとえるなら、記憶だけで答えさせるのではなく、「この公式テキストを調べてから答えてください」とするイメージですね。
ただしRAGを使えば自動的に正解になるわけではありません。
検索対象の文書が古い、必要なページを検索できない、検索した文章を読み違える、といった問題は残ります。
そのためRAGも、「ハルシネーションをゼロにする魔法」ではなく、根拠へたどり着きやすくする仕組みと考える方が分かりやすいでしょう。
MCPなどで外部データへつなぐ方法もある
生成AIが外部のツールやデータへアクセスする仕組みも広がっています。
ソフトバンクの解説ではMCP(Model Context Protocol)にも触れ、LLMとデータベースやSaaSなどを接続する考え方を紹介しています。
最新の業務データを扱うときに重要なのは、「AIが昔学んだ知識だけで全部答える」状態から離れることです。
ただし外部システムへ接続しても、その情報を正しく選び、正しく使えるとは限りません。
だから最後に必要になるのが人間の確認です。
重要な回答には人間を入れる
AIだけで処理を完結させず、途中や最後に人間が確認する考え方は「Human-in-the-Loop(HITL)」と呼ばれます。
ソフトバンクも2026年のHITL解説で、ハルシネーション対策やAIの信頼性を支える仕組みの一つとして紹介しています。
初心者の方には、私は「仕事の速い新人に下書きを頼む感覚」で考えると分かりやすいと思います。
文章作成はとても速い。
アイデアもたくさん出してくれる。
ただし、知らないことを知らないと言わず、もっともらしく答える可能性もある。
だから重要な数字や契約条件は、最後に担当者が確認するわけです。
ハルシネーション対策は「AI性能」から「運用設計」へ
ここからは私見ですが、生成AIのハルシネーションを考えるうえで重要なのは、高性能なモデルを選ぶだけでは十分ではないという点です。
2022年のGalactica、2023年のBardのような事例では、非常に高度なAIでも、もっともらしい誤情報を作る問題が注目されました。
その後、生成AIの実務活用では、RAGで根拠を与える、外部データへ接続する、ガードレールを設ける、HITLで人間が確認するといったAIの周囲の仕組みも重視されるようになっています。ソフトバンクも2026年の解説で、ハルシネーションを含む生成AIリスクについて、運用面を含めた対策を示しています。
私はこの流れを、生成AIが「何でも知っている先生」から「資料を渡して一緒に仕事をする助手」へ見方が変わってきたことの表れだと感じています。
特に40代、50代、60代から生成AIを仕事や副業で使い始める方は、難しいAI理論をすべて覚える必要はありません。
まず次の一つを覚えておけば十分です。
AIが書いた文章の滑らかさと、事実の正確さは別物。
ブログを書くなら、文章のたたき台や構成はAIに手伝ってもらい、料金・制度・日付・統計は公式情報へ戻る。
仕事のメールなら、文章表現はAIに整えてもらい、納期・金額・契約条件は自分で確認する。
この役割分担だけでも、ハルシネーションのリスクはかなり扱いやすくなります。
「AIは間違うから怖い」と避ける必要もありませんし、「最新AIだから大丈夫」と過信する必要もありません。
便利な部分は使い、間違うと困る部分だけ確認を強くする。
それが、生成AIと長く付き合っていく現実的な方法だと私は考えています。
まとめ
生成AIの誤情報について「ハレーションとは?」と調べている場合、一般的に使われる用語は「ハルシネーション(Hallucination)」です。
ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容や、根拠から確認できない情報を、自然でもっともらしい文章として生成してしまう現象を指します。ソフトバンクも2026年3月6日の解説で、事実に基づかない情報を精緻に出力する生成AIのリスクとして説明しています。
LLMは、基本的には文脈に応じたトークンの確率分布を使いながら出力を生成するため、「文章として自然であること」と「事実として正しいこと」は一致するとは限りません。
研究ではIntrinsic HallucinationとExtrinsic Hallucinationなどの分類もありますが、定義・分類方法は研究によって異なるため、二分類だけが唯一の定義だと考えないことも重要です。
実例としては、Metaの科学向けモデルGalacticaの公開デモが2022年11月15日の公開から11月17日に停止され、Googleが2023年2月6日に紹介したBardのデモではJWSTに関する「初」の事実関係が誤っていたことが知られています。
対策は、AIに「推測しない」と指示するだけではありません。
一次情報の確認、RAGなどによる根拠情報の参照、外部データとの連携、人間による最終確認を組み合わせることが重要です。
生成AIを仕事や副業で使うなら、「AIに任せるか、使わないか」の二択ではなく、間違ったときの影響が大きい情報ほど確認を強くするという考え方を持っておきましょう。
よくある質問
生成AIの「ハレーション」と「ハルシネーション」は同じですか?
同じ言葉ではありません。
生成AIが事実と異なる内容をもっともらしく生成する現象について、AI分野で一般的に使われる言葉はハルシネーション(Hallucination)です。ソフトバンクなどの国内企業によるAI解説でも、この表記が使われています。
「ハレーション」は写真・映像で強い光がにじむ現象などを指す別の言葉です。
ChatGPTでもハルシネーションは起きますか?
生成AIやLLMでは、事実と異なる内容をもっともらしく生成する可能性を考えて利用する必要があります。
特に人名、日付、統計、料金、法律、論文、引用、「初」「最大」「唯一」などの表現は、AIの回答だけで確定せず一次情報を確認するのがおすすめです。
RAGを使えばハルシネーションはなくなりますか?
RAGを利用しても、ハルシネーションが完全になくなるとは限りません。
RAGは信頼できる資料を検索して回答材料にできるため、AIの内部知識だけに頼る場合より根拠を限定しやすくなりますが、検索した資料が古い、必要な情報を取得できない、内容を誤って解釈するといった問題は残ります。
そのため重要な業務では、RAGと人間による確認を組み合わせることが現実的です。
松原 健一
フリーランスITアドバイザー


コメント