アニメ制作のAI活用は「作品を丸ごと自動生成する」方向だけではありません。OLMデジタルのANIMINSでは、作画・仕上げ・素材検索など、実際の制作工程を支える使い方が検証されました。
2024年12月に始まったANIMINSは、経済産業省とNEDOの「GENIAC」に採択された取り組みです。生成AIや機械学習を、クリエイターの代替ではなく制作支援ツールとして既存ワークフローにどう組み込むかが大きなテーマになっています。
※本記事では、生成AIだけでなく、自動彩色や類似画像検索などの機械学習を使ったAI支援技術も含めて紹介します。また、ANIMINSで公表された内容と、筆者による業界全体への考察を分けて説明します。
OLMデジタルのANIMINSとは?2024年12月に何が始まった?
ANIMINS(ANIMe INSight)は、OLMデジタルが中心となって2024年12月に始めた、アニメ制作現場におけるAI活用の調査・研究プロジェクトです。
経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める国内の生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」の、データ・生成AI利活用に関する事業として採択されました。
OLMデジタルは、アニメやフルCG、VFX映像などの制作に加え、制作現場向けツールを研究開発するR&D部門を持つ企業です。
IMAGICA GROUPが2025年2月14日に公開したOLMデジタルへのインタビューでは、ANIMINSについて、大学やスタートアップ企業と共同で進めるプロジェクトとして紹介されています。
大切なのは、ANIMINSが「AIでアニメを全部作れるか」を競うプロジェクトではないことです。
OLMデジタルはAIを「クリエイターをサポートするツール」と位置づけ、既存の産業アニメの制作工程にどう馴染ませられるのかを重視しています。
これは生成AIのニュースを見るうえで、とても重要な違いです。
私たちは「1枚の絵から動画ができた」「文章だけで映像ができた」と聞くと、つい完成した映像の派手さに目を奪われますよね。
しかし商業アニメでは、毎日使えること、修正できること、決められた制作手順につなげられることのほうが重要です。
ANIMINSが向き合っているのは、まさにこの「デモではなく仕事として使えるAI」という問題なのです。
ANIMINSは突然始まった研究ではない
OLMデジタルのAI研究には、ANIMINS以前からの積み重ねがあります。
IMAGICA GROUPの2025年2月の紹介によると、同社は2018年から大学との産学連携で、アニメの仕上げ工程を支援するAI技術の共同研究を進めてきました。
つまり、2024年末に生成AIブームを見て突然AIへ参入したわけではありません。
長年取り組んできた彩色などの制作支援研究に、近年急速に進歩した生成AIや検索AIを組み合わせ、より広い制作工程へ対象を広げた流れの中にANIMINSがあります。
その意味で今回の新しさは、単体のAI技術を研究するだけでなく、複数のAI技術を実際のアニメ制作フローの中で検証するところにあると私は考えています。
15か月の事業期間で実制作への導入を検証
2025年6月に公開されたアニメ制作R&D関係者の座談会では、ANIMINSについて15か月という事業期間で研究を進めていることが説明されています。
また、2025年10月末時点のIMAGICA GROUPによる報告では、事業終了予定は2026年2月末とされていました。
したがって、ANIMINSは単に研究テーマを並べるだけでなく、限られた期間の中で「どこまで実用化できるか」を確認する性格の強い取り組みだったことが分かります。
OLMデジタルは研究成果の外部発信にも取り組み、2025年には画像電子学会年次大会でANIMINSに関する特別講演も行っています。
ここから見えてくるのは、AI技術そのものだけでなく、アニメ業界全体で知見を共有できる形へ持っていこうとしている姿勢です。
ANIMINSではアニメ制作のどの工程にAIを使った?

公表されているANIMINSの中心テーマは、原画・動画・仕上げなどの制作支援、キャラクター描画を含む上流工程の支援、そして過去素材を探す検索技術です。
ここでは、ANIMINSで実際に公表された内容と、アニメ制作一般の話を混ぜないよう整理していきましょう。
原画・動画・仕上げ工程では何を検証した?
2025年6月の座談会で、OLMデジタルの前島謙宣氏は、ANIMINSの研究領域について大きく二つに整理しています。
一つは、原画・動画・仕上げ工程の省力化を支援する取り組みです。
もう一つは、絵コンテやキャラクターデザインなど上流工程を支援する取り組みです。
ただし、すべてが同じ実用化段階に達していたわけではありません。
前島氏は、仕上げ工程については試験運用段階まで進んでいる一方、原画の中割りや上流工程への支援については、2025年6月時点でまだ調査段階にあると説明しています。
この区別は重要です。
「ANIMINSで中割りAIがすでに実用化された」と受け取ってしまうと、実際の発表内容より話を進めすぎてしまいます。
仕上げは実用化に近い段階、原画・中割りなどは研究・調査の比重が大きい。
公表情報からは、そのように見るのが適切でしょう。
キャラクター描画支援では何を目指した?
2025年9月にAI Mageが公表したANIMINS中間報告会の資料では、調査対象として、
という二つの観点が明示されています。
さらに2025年12月のIMAGICA GROUPによる報告では、「CA(クリエイターズアシスト)システム」と呼ばれる研究が紹介されました。
これはラフスケッチをもとに生成AIを利用し、原画をトレースしながら必要な動きを補い、第二原画に近い品質まで仕上げることを目指すシステムとされています。
ただし、これも「ボタン一つで完成原画ができる」という意味ではありません。
アニメ制作では、演出家や作画監督による修正意図、キャラクター設定、動きのタイミングなど、多くの判断が重なっています。
ANIMINSの考え方を踏まえると、AIへ作品づくりを丸投げするより、人が描いたものを次の工程へ進める際の負担を軽くすることに重点が置かれていると見るべきでしょう。
私はこの点に、一般向け画像生成AIとの大きな違いを感じます。
家庭用の便利なAIなら「いい感じの絵」が出れば満足できます。
しかし制作会社では、「いい感じ」では困ります。
誰が見ても同じキャラクターであり、修正指示に対応でき、次のスタッフへ正確に渡せる必要があります。
つまりプロ向けAIは、生成能力だけでなく修正可能性と工程への接続性まで含めて評価されるわけです。
自動彩色SHIAGEDOはどこまで作業を減らした?
ANIMINS周辺で実用化に最も近い成果として公表されているのが、仕上げ工程を支援する自動彩色システム「SHIAGEDO」です。
この技術はANIMINS開始後に突然作られたものではなく、OLMデジタルが大学との産学連携で長期間研究してきた仕上げ支援技術の延長線上にあります。
2025年6月の座談会では、SHIAGEDOがすでに試験運用段階に入り、マレーシアのOLM Asiaで一定の省力化を実現していると紹介されました。
さらに2025年12月のIMAGICA GROUPの記事では、より具体的な検証結果も説明されています。
頻繁に登場するキャラクターをAIへ学習させ、色指定に沿って彩色できるかを試したところ、約8割を指示どおり正しく彩色できたケースがあったとされています。
ただし、動きが激しい場面では間違いが増え、AIが正しく塗ったかどうかを人が確認する「間違い探し」のような作業が新たに生じたとも報告されています。
ここが、とても現実的ですよね。
AIを導入すれば、これまでの作業が丸ごと消えるとは限りません。
「手で塗る仕事」が減っても、その代わりに「AIが塗った結果を確認する仕事」が増えることがあります。
そのうえで現場からは、仕上げ処理が約3割速くなったという声があったと紹介されています。
ここで注意したいのは、この「約3割」という数字です。
アニメ制作全体の工数が3割減ったという意味ではありません。
SHIAGEDOを使った仕上げ・彩色の当該検証において、処理が約3割速くなったとの現場評価が示された、という範囲で理解する必要があります。
また、別の導入事例では、カットによって作業効率が3〜5割改善したとの報告も紹介されています。
数字に幅があるのは当然です。
人物がほとんど動かないカットと、激しく動いて線が入り組んだカットでは、AIが処理しやすい難易度がまったく違います。
ですから、「AI彩色で必ず3割削減できる」と考えるのではなく、向いているカットでは大きな効果が期待できる一方、確認・修正コストまで含めて評価する必要があると見るのが適切です。
人が修正した結果を次の教師データに使う
SHIAGEDOの運用方法にも興味深い点があります。
2025年6月の座談会では、人間が彩色した最初のコマを教師データとしてAIが次のコマを塗り、人がその結果を確認・修正し、修正後の絵をさらに次の教師データへ使う方法が紹介されました。
たとえるなら、新人スタッフに最初のお手本を見せて仕事をしてもらい、直した結果を次の手本として覚えてもらうような流れです。
AIへ全部を任せるのではなく、
人が見本を示す → AIが処理する → 人が確認する → 修正版を再利用する
という循環を作るわけですね。
私は、この仕組みこそアニメ制作でAIが定着するヒントだと考えています。
人間とAIが仕事を取り合う形ではなく、AIが処理し、人間が品質を決める。
この役割分担なら、従来の制作工程を大きく壊さずにAIを組み込みやすくなります。
AI Mageの参考図検索エンジンは何を変える?
ANIMINSでは、新しい絵を生成するAIだけでなく、過去作品の膨大な素材から必要なカットを探すAIも実制作で検証されました。
この領域を担当しているのが、ANIMINSに参加するスタートアップ企業のAI Mageです。
AI Mageは、過去作品の映像や素材から必要なカットを探せる「参考図検索エンジン」を開発しています。
2025年9月17日に行われたANIMINS中間報告会では、AI Mage代表の張鑫氏が成果を発表し、トムス・エンタテインメントの竹村逸平氏が実際の検索システムを使ったライブデモを行いました。
AI Mageの発表によると、この検索技術はトムス・エンタテインメントを含む複数のアニメ制作スタジオで、各社の作品データを使ったトライアルが進められています。
どんな資料を検索するのか?
長期シリーズでは、過去の作品そのものが巨大な資料庫になります。
たとえば制作中に、
と確認したくなることがあります。
話数が少なければ、人の記憶でも探せるかもしれません。
しかし数年、数十話、数百話と作品が積み上がれば、「どこかにあったはず」を探すだけでも大仕事です。
AI Mageの参考図検索エンジンは、自然言語や画像を使い、こうした過去のカットを探しやすくすることを目指しています。
これは生成AIとは違う用途ですが、制作会社にとっては非常に実務的なAIです。
検索AIは「時短」だけではない
私がITツールの導入支援をしていてよく感じるのですが、仕事では「新しい資料を作る時間」以上に、前に作った資料を探している時間が積み重なることがあります。
「あのファイル、どこでしたっけ?」
会社員経験の長い方なら、一度は経験がありますよね。
アニメ制作でも同じです。
過去カットをすぐ探せれば、単純な検索時間を短くできるだけではありません。
以前の演技、設定、構図などを参考にしやすくなり、スタッフ間の意思疎通にも使えます。
さらに、担当者の記憶に頼っていたノウハウを、作品データから検索できる形へ変えられる可能性があります。
私はここに、ANIMINSの中でも特に大きな意味があると感じています。
過去作品を「保存された映像」から「検索可能な制作知識」へ変える。
これは生成AIで新しい絵を生み出すのとは別方向ですが、長期的には制作会社の大きな資産になるでしょう。
ANIMINSが示したアニメ制作AIの課題とは?

ANIMINSを率いたOLMデジタルの四倉達夫氏は、2025年2月のインタビューで、アニメ制作に生成AIを導入するうえで四つの大きな課題を挙げています。
ここからは一般的なAI論ではなく、四倉氏が実際に示した問題を軸に整理しましょう。
1. 著作権などのルール・権利問題
一つ目は、著作権などを含むルールや権利の問題です。
生成AIは、どのようなデータで学習したのか、出力物が既存作品とどのような関係にあるのかなど、従来の制作ツールにはなかった確認事項を生みます。
商業作品では、「AIで作れたから使う」という判断はできません。
制作会社には、作品を放送・配信・商品化できる状態にする責任があります。
そのため実務では、AIの性能だけでなく、
といった運用設計が重要になります。
なお、AIと著作権の法律上の判断は利用目的や具体的事情で変わるため、本記事では個別ケースの適法性までは断定しません。
「AI学習なら何でも自由」「少し変えれば問題ない」と単純化しないことが大切です。
2. 生成AIそのものへの拒否反応
四倉氏が二つ目に挙げたのが、生成AIに対する視聴者やクリエイター側の拒否反応です。
AIの利用については、法律だけ守れば済むわけではありません。
視聴者から「どこまでAIなのか」「クリエイターの仕事を軽視していないか」と疑問を持たれる可能性があります。
私は今後、制作会社にはAIを使ったかどうか以上に、どう使ったのかを説明できることが求められると考えています。
たとえば「キャラクターをAIに自動生成した」のと、「人間が描いた線画の彩色候補をAIが作り、人間が全部確認した」のとでは、同じ「AI使用」でも意味が大きく違いますよね。
技術が制作工程へ細かく入り込むほど、「AI作品か、人間作品か」という二択では語れなくなっていくでしょう。
3. 忙しい現場ほど新しいAIを試せない
三つ目は、制作現場にAIを試す余力がないことです。
これはIT導入でも非常によく起きる問題です。
新しいシステムを入れれば半年後には楽になるとしても、目の前の仕事で手いっぱいなら、そのシステムを覚える時間が取れません。
アニメ制作も同じでしょう。
AIツールを導入するには、
といった準備が必要です。
したがってAI導入の効果を見るときは、「AI処理だけで何分短縮したか」だけでは不十分です。
導入・教育・確認・修正を含めた総工数が本当に減ったかを見る必要があります。
SHIAGEDOで「AIの間違いを探す工程が増えた」と報告されていることは、その難しさを分かりやすく示しています。
4. 2Dアニメ特有の技術的な難しさ
四つ目は技術面です。
四倉氏は、アニメ分野の研究開発が他分野に比べて多くないことや、アニメ業界に所属するエンジニアの数が限られていることにも言及しています。
2Dアニメ制作には、一般的な画像編集とは違う独自のルールがあります。
原画、動画、仕上げ、色指定、絵コンテ、タイムシート、カット管理など、複数の工程が連携しています。
AIがきれいな画像を出せるだけでは、その途中に入り込めません。
ここで改めて重要になるのが、ANIMINSが掲げる既存ワークフローへAIを馴染ませるという視点です。
AIモデルの性能と、制作現場で使えることは別なのです。
ANIMINSから見える生成AIとアニメ制作の今後は?
ここからは、ANIMINSで公表された事実を踏まえた筆者の考察です。
私は今回の取り組みを見ると、アニメ制作におけるAIの本命は当面、「作品を全部作る万能AI」ではなく、工程ごとに配置される専門的な支援AIになる可能性が高いと考えています。
理由は、実用化の進み方にあります。
SHIAGEDOは彩色という比較的役割を限定した工程で試験運用まで進みました。
AI Mageの参考図検索エンジンも、「既存素材を探す」という目的がはっきりしています。
一方、原画の中割りや上流工程の生成支援は、2025年6月時点では調査段階にあると説明されていました。
つまり、AIに任せる範囲を狭くし、何が正解かを人間が確認しやすい仕事ほど、現場へ入りやすいわけです。
「生成できるか」より「直せるか」が重要になる
一般向け生成AIでは、一度出た結果が気に入らなければ「もう一度作る」で済む場合があります。
しかし商業アニメではそうはいきません。
「目の位置を少し直してください」
「前のカットと手の位置を合わせてください」
「このキャラクターはここではもっとゆっくり動きます」
といった具体的な修正へ応えられなければ、制作工程には入りにくいでしょう。
そのため将来のプロ向けAIでは、生成品質だけでなく、
修正しやすさ、再現性、履歴管理、既存ツールとの連携
が競争力になっていくのではないでしょうか。
これは、AIの性能ランキングだけを見ていては分かりにくい部分です。
新人育成への影響も考える必要がある
ANIMINSの発表で直接大きく扱われているテーマではありませんが、筆者が実務面で気になるのが人材育成です。
AIが彩色や中間工程の仕事を効率化すれば、制作負担を減らせる可能性があります。
一方で、これまで若いスタッフが基礎的な工程を担当しながら作品づくりを学んできたのであれば、その仕事が減ったときに「どこで基礎を身につけるか」という問題が出てきます。
効率化によって浮いた時間を教育や高度な作業の訓練へ振り向けられるなら、AIは人材育成を助ける道具にもできます。
逆に単純に仕事量だけを減らせば、技術継承が弱くなる可能性もあります。
ですからAI導入は、単なる工数削減プロジェクトではなく、人間の仕事をどのように再設計するかという組織づくりの問題でもあると私は考えています。
「AIを使ったか」から「AIをどう管理したか」へ
もう一つ重要なのが透明性です。
今後、制作工程の一部でAIが当たり前に使われるようになれば、「この作品はAI作品ですか、人間作品ですか」と完全に二分するのは難しくなるでしょう。
彩色の一部だけAIかもしれません。
過去素材の検索だけAIかもしれません。
ラフの整理だけAIが手伝っているかもしれません。
そこで大切になるのは、
という運用です。
私は将来、制作会社のAI活用を評価するとき、「AIを使っているから進んでいる」という見方はあまり意味を持たなくなると思います。
安全に、説明可能な形で、品質を落とさず使えているか。
こちらのほうが、はるかに重要になるでしょう。
ANIMINSが重要なのは「AIアニメ」ではなく制作工程を変えようとしているから
ANIMINSを追っていくと、生成AIの話題でよく見る「AIだけでアニメが作れるのか」という問いとは、少し違う景色が見えてきます。
OLMデジタルが実際に進めてきたのは、仕上げを助けるSHIAGEDO、原画やキャラクター描画を支援する研究、過去カットを探すAI Mageの参考図検索エンジンなどです。
どれも、人間を一気に消してしまう仕組みではありません。
人間がこれまで何時間もかけていた細かな処理や検索をAIに助けてもらい、最後の判断はクリエイターが行う形です。
私はここに、アニメ制作とAIの現実的な接点があると感じています。
生成AIの進化を見ると、「いつ人間を超えるか」「全部自動化できるか」という話になりがちです。
しかし会社の現場では、革命的なツールより、毎日10分、30分、1時間を確実に減らしてくれる仕組みのほうが長く残ることがあります。
SHIAGEDOや参考図検索エンジンは、まさにそのタイプの技術かもしれません。
AIでアニメを作るのではなく、AIも使いながらアニメを作りやすい現場へ変えていく。
ANIMINSの価値は、そこにあると私は考えています。
まとめ
OLMデジタルは2024年12月、経済産業省とNEDOのGENIAC事業のもとで、アニメ制作におけるAI活用を調査・検証するANIMINS(ANIMe INSight)を開始しました。
公表された取り組みでは、原画・動画・仕上げ工程の支援、キャラクター描画など上流工程の研究、AI Mageによる過去作品の参考図検索などが進められています。
中でも仕上げ支援システムSHIAGEDOは試験運用まで進み、2025年の報告では、検証条件によって約8割を正しく彩色できた例や、現場から仕上げ処理が約3割速くなったとの評価が紹介されました。
ただし、この約3割はアニメ制作全体の削減率ではなく、SHIAGEDOを使った仕上げ工程に関する当該検証での評価です。AIの誤りを人が確認する新しい作業も発生しており、単純に「AIなら3割削減できる」と捉えるべきではありません。
また、AI Mageの参考図検索エンジンは、トムス・エンタテインメントを含む複数の制作スタジオでトライアルが進められ、過去作品を検索可能な制作資産へ変える可能性を示しました。
一方、原画の中割りや上流工程へのAI支援は、2025年6月時点ではまだ調査段階と説明されており、工程によって実用化までの距離には差があります。
ANIMINSから見えてくるのは、「AIだけでアニメを完成させる未来」より、彩色・作画補助・素材検索などの専門AIを既存ワークフローへ組み込み、人間が品質を判断する未来です。
派手な生成映像だけを見るのではなく、権利、品質、導入コスト、修正のしやすさ、そして実際に総工数が減ったのかまで見ることが、アニメ制作におけるAI活用を正しく判断するポイントになっていくでしょう。
よくある質問
ANIMINSとは何ですか?
ANIMINS(ANIMe INSight)は、OLMデジタルが中心となり2024年12月に開始した、アニメ制作におけるAI活用の調査・研究プロジェクトです。
経済産業省とNEDOのGENIAC事業に採択され、原画・動画・仕上げ、キャラクター描画支援、過去素材検索などの可能性を検証してきました。
SHIAGEDOでアニメ制作全体の工数が3割減ったのですか?
いいえ。公表された「約3割」は、アニメ制作全工程を3割短縮したという意味ではありません。
仕上げ支援システムSHIAGEDOを利用した当該検証で、現場から仕上げ処理が約3割速くなったとの評価が紹介されたものです。カットの難易度や確認・修正作業によって効果は変わります。
ANIMINSはAIだけでアニメを作るプロジェクトですか?
いいえ。OLMデジタルは生成AIを「クリエイターの代替」ではなく、制作現場を支えるツールとして位置づけています。
実際に公表されている取り組みも、彩色、作画支援、参考図検索など工程単位の支援が中心で、人間が確認や品質判断を行う考え方が基本です。
松原 健一(まつばら けんいち)
フリーランスITアドバイザー


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